実はあまり馴染みがなかった在宅薬剤師。
チャレンジしてみたら、薬剤師としての視座が高まりました

在宅医療
2025.01.24
かもめ薬局では、地域のみなさまに頼りにされる薬局を目指して、スタッフが日々研鑽を積みながら業務に取り組んでいます。今回は、「こもれびの森薬局」で管理薬剤師として働く入社7年目の矢口 寛揮さんに、「在宅薬剤師としての経験が拓いた自らのキャリア」について聞きました。
こもれびの森薬局 管理薬剤師
矢口 寛揮
「在宅専任薬剤師の頃に感じた知識不足」
Q. はじめに、トライアドジャパンに入社してからの経緯を教えてください。
矢口:2018年に入社し、現在7年目です。入社後、半年の研修期間ののち、かもめ薬局旗の台店、なぎさ店で勤務し、その後、横浜調剤センターで在宅専任薬剤師として働きました。2022年6月から、当薬局で管理薬剤師を務めています。
Q.在宅医療に興味をもったきっかけは?
矢口:入社後の研修で、先輩薬剤師に同行して患者さんのご自宅や施設に訪問する機会がありました。患者さんの生活の様子や居宅での服薬指導は、外来では知ることのできないことばかりで新鮮だったのを覚えています。
実は、当時は在宅医療にはあまり興味がなかったんです。ただ、やらないまま薬剤師として働いていくのはもったいない気がして、思い切って在宅の世界に飛び込んでみることにしました。
実際に在宅業務に従事するようになると、医薬、薬学の臨床的な知識が圧倒的に足りないことに気付かされました。そこで、気になることはすぐに調べてノートにまとめるなど猛勉強しました。会社が開催する研修会で、実践的な知識を身につけられたのも助かりました。
特に、検査値の見方は勉強になりました。医師は血液検査の結果を診ながら処方を変更していきます。検査値の見方を学んだことで、例えば「腎機能が下がっている」といった表面的な理解だけでなく、病態から患者さんの状態を把握して、それを基に症状を聞き取ったり、目の前の患者さんの状態に適したアドバイスができるようになりました。
在宅専任薬剤師となり3年が経つ頃には、医師や訪問先の施設スタッフに薬の副作用のことや飲み合わせについて質問された時に、適切に回答できるようになり、大きな自信につながっています。
「医師と協働して患者さんをサポート」
Q. 現在、こもれびの森薬局で管理薬剤師と勤務されていますね。業務内容を教えてください。
矢口:在宅業務に3年間従事し、そろそろ次のステップとして管理薬剤師にチャレンジしたいと思って上司に相談したところ、当薬局の管理薬剤師としての勤務を提案されたので、挑戦することにしました。
当薬局は、薬剤師2名、ファーマコンシェルジュ(薬局事務スタッフ)2名体制です。応需処方箋枚数は平均すると1日65枚ほどの、外来調剤がメインの薬局です。
外来業務のかたわら、管理薬剤師として店舗運営に関連する業務も行っています。数字の管理も大切な仕事の1つです。現在、特定の医療機関からの処方箋比率が高いため、他医療機関からの処方箋枚数も増やせるよう、さまざまな施策を試みています。患者さんと話をすると、「どこの薬局でも薬を交付してもらえるなんて、知らなかった」などの声をいただくんです。
その患者さんが複数の薬局に通っていると、相互作用のチェックなどが難しくなります。より質の高い薬学管理を提供するためにも、一元管理の重要性を丁寧に説明するなど、地域の方々の健康をサポートするため、スタッフと力を合わせて頑張っています。
「在宅の経験があるから今の自分がある」
Q. 在宅専任薬剤師としての経験は、現在の業務にどう活きていますか?
矢口:外来業務しか経験がなかった時には、医師との距離が遠く、相談したくても気持ちの面でハードルがありました。在宅業務では訪問診療に同行したり情報共有をする機会が多かったことから、現在は患者さんのことを気軽に処方医に相談したり、薬に関する提案もできるようになりました。具体的には、最寄りのクリニックに定期的に訪問して、医師と患者さんに関する情報交換を行っています。
医師以外の他職種との連携に関しても、在宅専任薬剤師時代の経験が活かされていると思います。例えば、服薬管理に困難を抱えている外来患者さんのケースでは、ケアマネジャーに相談して訪問薬剤管理につながったこともありました。
外来でも在宅でも、患者さんと会話することが何よりも大切だと実感しています。先日も、「薬が何種類もあってどれを飲めばいいか分からなくなる」と打ち明けてくれた患者さんがいらっしゃいました。詳しく聞くと、飲み忘れによる残薬がかなりあり、一包化を提案したことで、「忘れずに飲めるようになったよ」と言っていただけました。患者さんのよりよい薬物治療に貢献できることが何よりのモチベーションになります。
もっとも身近な医療者として、患者さんの声を拾い上げ、健康やQOLの改善につながる提案をすることも薬剤師の大切な役割です。「漢方薬が飲みづらい」などと相談された時に、ただ聞き役になるのではなく、「ココアに混ぜると飲みやすくなるかもしれませんよ」など、個々のライフスタイルに合わせたアドバイスができるようになったのは、在宅を経験したおかげだと思います。
Q. 今後の目標や展望をお聞かせください。
矢口:キャリアについては、まずは管理薬剤師としての仕事をこなせるようになってから、ゆくゆくはエリアマネージャーなど次のステップにも挑戦したいと思っています。
管理薬剤師としての今の目標は、まず店舗の調剤基本料を上げることです。かかりつけの患者さんを増やしたり、患者さんのQOLを上げるための様々な工夫を行うことで、結果、基本料が上がるのだと考えています。目標を掲げてスタッフ皆で取り組むことでモチベーションにもつながりますし、きめ細やかなサービスを患者さんに提供することができます。
個人のスキルアップとしては、最近は「漢方薬・生薬認定薬剤師」の認定を取得しました。漢方に対しては、もともと苦手意識があったのですが、処方を受ける機会が多かったため、より的確な指導につなげたいという思いから勉強を始めました。勉強する上では、正確な知識を体系的に学びたいと考え、認定の取得を目指したのです。認定を取得して満足するのではなく、これからも勉強を重ねて患者さんに還元していきたいと考えています。
Q. 最後に、トライアドジャパンに興味をもたれている薬学生さんへメッセージをお願いします。
矢口:管理薬剤師としての仕事が始まった頃は不安に思うこともありましたが、トライアドジャパンではエリアマネージャーやその上の役職者が薬局に来て相談に乗ってくれるなど、しっかりサポートしてくれるので安心して働くことができます。
また、向上心の高い同期の仲間に恵まれているのもありがたいですね。調剤報酬改定や薬局運営について、LINEグループで情報交換したり、時には飲みに行ったりと、刺激し合っています。
就職活動は選択の連続だと思います。病院や調剤薬局、ドラッグストアなど、さまざまな選択肢がありますが、まずは思い込みを捨ててフラットに見てみるといいと思います。その中で、「自分にとって譲れないもの」を1、2個決めて、それを軸に判断するのがおすすめです。大切にしている価値観に向き合って判断すれば、自分に合った就職先が必ず見つかるはずです。