コラム

Column

治験という一大プロジェクトの進行を陰で支える “縁の下の力持ち” ――SMA(治験事務局担当者)の仕事とは

治験

2022.06.21

SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)とは、治験を実施する医療機関と契約し、治験が適正かつ円滑に進むよう、煩雑な治験業務を様々な側面から支援する組織です。

CRC(治験コーディネーター)が、主に医療機関において治験業務をサポートするのに対して、SMA(Site Management Associate:治験事務局担当者)は、治験が適正かつ円滑に進むよう、必要な書類の作成や管理、各種委員会等の運営サポートを行ないます。厳格なルールと煩雑な手続きを要する治験の進行には、SMAの手腕が欠かせません。

今回は、トライアドジャパン医薬開発本部の SMO(Site Management Organization)事業部でSMAとして活躍する根津瑶子さんに、SMAの働き方ややりがいについてお話を聞きました。

医薬開発本部 SMO事業部 支援課 サイトマネジメント係

根津瑶子

「SMAは、治験を円滑にすすめるための“縁の下の力持ち”」

Q. トライアドジャパンに入社したきっかけを教えてください。

根津:私はトライアドジャパンに在籍して8年になります。前職では医薬品開発の研究職に就いており、成分分析などの業務に5年ほど携わっていました。「これまでと違った仕事にチャレンジしたい」と思っていたタイミングで、現在の上司にトライアドジャパンを勧められ、SMAの仕事に挑戦してみようと転職を決意したんです。

Q. SMOとは、安全かつ円滑に臨床試験が行われるよう、治験を実施する医療機関から委託を受けて治験業務を支援する機関のことですよね。SMOで働くSMAとは、どのような仕事なのでしょうか?

根津:SMAとは、治験業務上必要な書類の作成や管理、保管をはじめ、法令を遵守したうえでさまざまな業務を通して治験が適正かつ円滑に進行するよう支援する担当者のことです。トライアドジャパンのSMAとして私が担当している業務は、大きく分けて2つです。

ひとつは治験事務局業務で、SOP(※1)や、GCP(※2)によって定められた必須文書の作成、ファイリング、保管を治験実施施設(医療機関)に代わって行います。私がSMAとしてメインで担当している施設は常時5〜6施設ほどあり、大抵は複数のプロトコールを同時に進めています。

※1)SOP:Standard Operating Procedures;標準業務手順書=治験の際に必ず守るべき基本的な業務手順をまとめた手順書
※2)GCP:Good Clinical Practice;医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令。治験実施施設等による保管が義務付けられている


ふたつめはIRB(治験審査委員会)事務局の業務です。IRBとは、治験が適切にすすめられているか、利害関係のない第三者の医師や専門家が審議するための組織で、治験に参加してくださる被験者さんの安全と人権を守るために設置された重要な機関です。
私が担当している業務は、審議資料の作成、会場設営や当日の委員の先生への対応、議事録作成、必須文書の作成や管理などで、要するにIRBの運営そのものです。
IRBで審議し、承認が得られた後に、新規試験であれば契約締結に進め、医療機関の治験費用の請求書作成や管理などの支援も行っていきます。

「SMAとCRCは車の両輪。チームワークが欠かせません」


Q. 「SMA」と「CRC」には、どのような違いがあるのでしょうか?

根津:CRCが医療機関に赴いて、主に現場で担当医師や関連部署と連携したり、治験に参加する患者さんのサポートを行ったりして治験を進めるのに対して、SMAは、現場には赴きませんが、治験をスムーズに進めるために必要な文書の作成や管理、各種委員会などの運営業務などを行います。「裏方の事務仕事」と思われることもあるのですが、実際は対外的な折衝業務も多く、コミュニケーション能力や交渉力が求められます。SMAとCRCは車の両輪のようなもので、チームワークを発揮してこそ治験を適正かつ円滑に進めることができるのだと思います。

Q.事務的な業務ばかりでなく、チームワークやコミュニケーション能力が求められる仕事なのですね。

根津:丁寧なコミュニケーションを常に心がけています。前職も医薬品関係の仕事をしていましたが、以前に比べて社外の方とのかかわりが増えました。ただ、SMAの業務の特性上、メールや電話などでのやりとりが多く、“端的に伝えること”“伝わりやすい言い回し”となるよう工夫しています。

「プレッシャーも大きいが、やりがいがあり自分を成長させられる仕事です」

Q. 予算規模も大きく、関わる人も多い……。大変なプレッシャーのなかで仕事をしているのですね。

根津:SMAの仕事では、GCPを理解したうえで、治験に関する幅広い知識が求められます。そのため、法規などアップデートされる情報をキャッチアップするために、eラーニングを受講したり研修に参加したりして学びを続けています。現状のメンバーは6名ですが、限られた人員で多数のプロジェクトを抱えますのでタスクは多いです。精緻さが求められるため、集中力が鍛えられますね(笑)。

Q. SMAの業務のどんな部分にやりがいを感じますか?

根津:いろいろありますが、新規案件を、無事、契約締結までこぎつけることに、特にやりがいを感じます。治験依頼者(製薬会社)のニーズを聞き出し、実施施設の要望もふまえて窓口となり交渉するため、責任も重大です。双方の立場を尊重し、粘り強く交渉した結果が実を結んだときには大きな達成感があります。反対に、提案をなかなか受け入れてもらえないときなどは、しんどい局面にもなりますので、上長に早めに相談するなどを心がけています。


先にお話ししたとおり、SMAの仕事は地味な「裏方仕事」と捉えられることもありますし、実際にそういった業務が多いと言えます。表には見えない部分で“縁の下の力持ち”的な存在として貢献するSMAは、治験になくてはならない存在です。ひいては日本の医療を支える重要な仕事の一翼を担っているという自負や、大きなプロジェクトに携わっている実感もあります。

「DX推進は、SMAと治験事業の最前線」


Q. SMO事業部のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進でも、中心的な役割を担っているそうですね。

根津:少し前から治験業界でもDXが進められてきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって加速度的に推し進められた印象です。トライアドジャパンは「Agatha」(アガサ株式会社のクラウドサービス)を使っていち早く電子化を進めてきました。コロナ禍でリモートワークが推奨されるなかで、場所の制約なくクラウド上で書類を確認できるメリットは大きいですね。導入前は様々な会社のサービスを比較検討したり、導入決定後は、SOPの改訂なども進めました。社内外へ向けたマニュアルを作成して利用方法をレクチャーするなど、DX推進にあたり新たな経験ができました。

Q. 社外のウェビナーにも登壇される予定とか?

根津:そうなんです。縁あって、アガサ株式会社が開催するウェビナーにお声がけをいただきました。現在、講演内容をまとめているところです(取材時※)

▶︎ウェビナー記事はこちら「Agatha IRBによるコスト削減、効率化!」アガサ株式会社

「後輩の育成を通じて、SMAの仕事の意義を伝えていきたい」

Q. 入社して8年ということですから、役職としても責任ある立場にいることと思います。

根津:主任として、部署の取りまとめもする立場になりました。入ったばかりのころは、困ったことがあれば周りの先輩方に助けてもらえましたが、いまは私がサポートする立場です。自分の業務や言葉には責任をもつように心がけています。力を入れているのは、新人教育とミスを起こさない仕組みづくり。個々がミスをしないように気をつけることは大切ですが、精神論だけではミスは防げません。組織として、ミスを起こさない仕組みを構築することが重要だと思っています。

Q. SMAとして、トライアドジャパンへの入社を考えている方へのメッセージをお願いします。

根津:SMAやCRCが中心となって社内外との良好な関係性を築くことが、治験を円滑に進めるためのカギとなります。SMAはさまざまな方との橋渡しとなることが多い仕事ですので、ぜひコミュニケーションを大事にすることを考えてもらいたいです。意欲溢れるSMAの仲間が増えることを願っています。

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