コラム

Column

知識と臨床力、思いやりを備えた“考える薬剤師”を目指して

かもめ薬局

2023.05.02

かもめ薬局では、地域のみなさまに頼りにされる薬局を目指して、スタッフが日々研鑽を積みながら業務に取り組んでいます。今回は、かもめ薬局相模が丘店で薬局長・管理薬剤師として働く入社6年目の長津香帆さんに、実際の業務内容や薬剤師として目指すことについて聞きました。

かもめ薬局相模が丘店 薬局長・管理薬剤師

長津 香帆

「新卒時代は、薬剤師としてたくさん学べる環境で働いた方がいい」

Q. 数ある薬局の中で、トライアドジャパンに就職を決めた理由を教えてください。

長津:薬学部卒業後の道として、病院と薬局で迷われる人が多いと思いますが、「薬局で働きたい」という思いに迷いはありませんでした。とくに、地域密着型の薬局がこれからもっと必要とされていくだろう、であれば全国的に広く展開している薬局よりも、エリアをある程度限定して展開する薬局のほうが患者さんのニーズが高いのではないかと考えたのです。

また、新人育成に力を入れていて、学びたい人を積極的にサポートしてくれる、つまり薬剤師のキャリアアップを後押ししてくれるという会社としての方向性も決め手になりましたね。新卒1年目というのは、薬剤師としての知識や経験を吸収するとても大事な時期ですから、できるかぎりたくさん学べる会社で働きたかったんです。

当時は治験の業務にすこし興味を抱いていたので、将来的に治験をやりたいと思ったときにトライアドジャパンならその選択肢があるというのも、魅力的でした。

Q. 入社後の経歴と、現在の仕事内容を教えてください。

長津:1年目にタイプの異なる3店舗で研修を受けたあと、かもめ薬局平塚店に配属されました。在宅患者さんも外来患者さんも多い、薬局です。薬剤師の人数が多く、業務の分担がしっかり行なわれているのが特徴的でした。

1年間勤務したあと、現在のかもめ薬局相模が丘店に異動となりました。平塚店よりも規模が小さく、薬剤師2名と事務1名の3人です。総合病院の近隣に位置する薬局で、薬局前の病院を受診する患者さんのほか、別の医療機関を受診する地域住民の方々もいらっしゃいます。現在、かかりつけ薬剤師として担当している患者さんは30人ほどです。かかりつけ薬剤師になった以上は、薬局来店時だけではない、その患者さんの生活全体にも気を配る必要がありますから、責任の大きい仕事です。

がんと闘った患者さんとの出会いと別れ

Q.印象に残っている患者さんとのエピソードを教えてください。

長津:最も心に残っているのは、かかりつけ薬剤師として担当していた70代の女性患者さんです。もともとは他の薬局に通っておられたのですが、ある日たまたまうちに来てくれたとき、「かもめ薬局のほうがいい」と感じてくれたそうです。

それから頻繁に通ってくれるようになったのですが、彼女はがんでした。最初元気に歩いて来局されていたのに、徐々に杖歩行になり、車椅子になり……というように、お会いするたびに衰弱していくのが、目に見えてわかるんですね。こうした進行性の疾患の患者さんの場合、定期的に状況を確認することが重要となります。そこで「かかりつけ薬剤師」にしていただき、毎回担当することで、その時々で体調の変化を把握し、困り事がないかを確認し、状況に応じてアドバイスするなど、より密にコミュニケーションを心掛けました。他にも病院で抗がん剤治療を受けた後は体がつらそうだったので、そういうときは待合のソファーまでお薬をお持ちしたり、なるべく早くお薬を出して待ち時間を少なくするなどちょっとした配慮をしたり、ご自宅で管理しやすいよう薬の一包化を提案したり、ごく当たり前のことですが、患者さんの体調に合わせて対応しました。

残念ながら彼女は亡くなってしまったのですが、その直前まで当薬局に通ってくださいました。亡くなったあとに息子さんが来局され、「母はこの薬局と長津さんのことがすごく好きだったので、最期に顔を見に来てほしい」とお声がけいただき、お線香を上げにご自宅にお邪魔させていただきました。薬剤師は、ドクターやナースに比べ、直接感謝を受ける機会はなかなかありません。そもそも自分としては、さほど特別なことをしたという意識もないのです。

それでもこの患者さんはすごく感謝してくださって、薬剤師としての自分の行動が、患者さんにこんなに大きな影響を与えるという責任の重さを痛感し、とても大きな意味のある経験となりました。

これからの薬局は、「処方された薬を出す」のみならず、患者さんをさまざまな視点からサポートし、適切な治療や支援につなげる役割が期待されるのではないでしょうか。

他にはない「医師による研修」で臨床力アップ


Q. 長津さんは、薬剤師向けの月刊誌「日経ドラッグインフォメーション」に掲載されている「Dr.岸田の検査値の生かし方」というコーナーでの医師と薬剤師のカンファレンスに定期的に参加されているとうかがいましたが……。

長津:これは、薬剤師の臨床力を底上げするための知識や思考力を鍛えるために、Sapporo Medical Academyの代表である岸田直樹医師と薬剤師が、実際の症例を基にカンファレンスを行うものです。検査値を薬学ケアに活かすことが1つのテーマとなっており、毎回、処方箋から患者さんの病態を把握し、検査値をどう読み、処方医への提案に活かしたり、患者ケアに活かしていくかを話し合うものです。

岸田先生は研修医や薬剤師などの臨床教育のエキスパートで、全国的にも有名な先生です。そうした医師から直接、臨床の考え方や薬の使い方などを学べるこのカンファレンスは大きな学びになっています。ひとつの処方をもとに患者さんの背景や治療方針などさまざまなことを深掘りしていくのですが、いわば「考える薬剤師」を育む機会だと捉えています。

Q. カンファレンスで得たことが、患者さんや普段の薬局業務に生きているのでしょうか?

長津:大いに生かされています。カンファレンスでは、「この患者さんに対し、自分はどのように介入していけるのか?」と悩んだときに、ベテランの先輩薬剤師の考えや医師ならどう考えるかを聞くこともできます。医師にどのような情報を共有すれば診断や診療の助けになるかといったことも分かり、トレーシングレポートを用いて情報提供する上でもとても参考になります。

患者さんによりよい薬物治療を受けていただくための提案にもつながると考えています。

専門性を高めて患者さんをサポートしたい


Q. これからの薬剤師には、薬学的な知識と「臨床力」が大切だと言われていますが……。

長津:医療は、日々進歩していくものです。だから私たち薬剤師も、「薬剤師になる」がゴールではなく、薬剤師になってからいかに成長していくかが重要だと考えています。

医療が進歩しているのに、薬剤師が止まったままでは置いていかれます。トライアドジャパンには、教育制度や奨学金制度が創設されるなど、変化の激しい世の中の動きに柔軟に対応し、薬剤師としての力を伸ばせる環境が整えられていると思います。

Q. 理想とする薬剤師像や、これからの目標やキャリアについて展望をお聞かせください。

長津:薬剤師にも専門性が期待されています。そうした流れのなかにおいて私は、自分の強みを持ちたいと考えています。現在は精神科の患者さんが多いこともあり、精神科の分野で専門的な資格をとりたいですね。

精神科の疾患は、仕事や人間関係など、その患者さんが置かれた環境を要因とするケースもあり、自分の努力だけではどうにもできないケースが多い。だから私は「精神薬学会認定薬剤師」として、患者さんの薬物療法をサポートしてあげたいと考えています。志や目標を持ちながら日々の仕事に取り組みたいですね。

Q. 最後に、就職活動中の方々へメッセージをお願いします。

長津:薬局はとてもたくさんありますから、ひとつの会社を選ぶというのはとても難しいと思います。そのときに、「この会社がいいらしい」「この会社はお給料が高いらしい」といった周囲の声に流されないで、自分の進路を決めてほしいと思います。

大事なのは自分の信念で、つまり「薬剤師になってどのように働きたいか」というビジョン。それを自分のなかで明確にして、それを叶えることができる会社を選ぶことが、「後悔しない選択」となるのではないでしょうか。

信念を持っているかたがたと、ぜひ一緒に働きたいですね。

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